
スナックのカラオケで50代が歌いやすい曲を探すとき、まず思い浮かぶのは自分の年代のヒット曲でしょう。ただ、カウンターで一台を回す場では、自分が歌えるかどうかと同じくらい、その場の人がどれだけ知っているかが効いてきます。年齢そのものより、どの曲を共有できるかという問題です。
世代で共有される曲という考え方
音楽の記憶は十代から二十代前半に集中すると言われます。この時期に聴いた曲が生涯にわたって残る現象は「レミニセンス・バンプ」と呼ばれ、心理学や音楽学の分野で繰り返し報告されてきました。中学高校から社会に出るまでの数年に流れていた曲は、覚えようとしたわけでもないのに、イントロだけで口が動きます。
2020年代に50代の人なら、十代は1980年代後半から1990年代前半にあたります。テレビの歌番組が力を持っていた最後の時期とCDの売上が伸び続けた時期が重なり、聴こうとしなくても同じ曲が街と有線から流れてきました。結果として、同世代で知っている曲の重なりが厚い。この厚みが、そのまま歌いやすさになります。
歌いやすさの第一条件は、声域でもテンポでもなく、聴き手に届くかどうかです。全員が同じ曲を聴く場では、イントロで反応が起きる曲ほど場が動きます。自分の年代の曲を選ぶことには、それだけで理由があるわけです。
声は変わるという前提で選ぶ
年齢とともに声が変わるのは、一般に知られた身体の変化です。声帯とその周りの筋肉は少しずつ弾力を失い、高い音に必要な細かい調整が効きにくくなります。歌い続けている人ほど変化は緩やかだとも言われます。
大事なのは、出せる音の幅が狭くなるというより、幅の位置がずれる点です。高いほうが苦しくなる一方、低いほうは太さが増して安定することがある。原曲キーで歌えた曲が今きついのは、楽な高さが下に移動したからだと考えられます。
対処は二通り。曲を低めのものに替えるか、同じ曲のままキーを下げるかです。後者のほうが、歌い慣れた曲をそのまま使えるぶん有利になります。基準はサビの最高音。下げすぎると低音が響かなくなるので、半音ずつ試すのが確実です。操作の考え方はカラオケのキー設定のやり方にまとめました。
テンポという要素
見落とされやすいのが速さです。歌いにくさの原因が音程ではなく、言葉の詰め込みにあることは珍しくありません。一音に一文字ずつ言葉が流れる曲は息を吸う場所が少なく、途中で追いつけなくなる。
一般論として、歩く速さに近いミディアムテンポは歌い出しやすいと言われます。遅すぎるバラードは一音を長く伸ばすぶん声の揺れが目立ち、速い曲は言葉の処理が忙しい。その中間が息継ぎの余裕を作りやすく、1980年代後半から1990年代の歌謡曲やJ-POPには、この速さの曲が多く残っています。手拍子が入れやすくサビだけ一緒に口ずさめるので、聴き手の参加できる余地も生まれます。
若い世代がいる場での選び方
カウンターには年齢の違う人が並びます。自分の世代の曲が全員に通じるとはかぎりませんが、これは若い人に合わせて知らない曲を歌うという話ではありません。世代をまたいで知られる曲には、いくつかの型があります。
昭和歌謡やフォークのように、親から子へ歌い継がれたもの。ドラマや映画の主題歌として繰り返し使われ、再放送や配信で後の世代にも届いたもの。近年カバーされたり動画で流行したりして、当時を知らない人が先に知っているもの。どれも自分の年代の曲でありながら、下の世代にも届きます。
先に歌った人の年代に近いところを選ぶやり方も有効です。若い人が前に歌ったなら、そこから極端に離れない年代にする。世代の混ざり方はスナックで繋がる、世代を超えた友情でも書きました。知らない曲が流れたときは、聴いて拍手する、手拍子で加わる。それだけで場は成立します。
歌い慣れた曲の強さ
年代別に探していくと、最後に残るのは何度も歌ってきた曲です。歌い慣れた曲は、息継ぎの位置とどこで力を抜くかが体に入っている。初めての曲はメロディを追うことに意識が向き、声を作る余裕がなくなります。同じ実力でも、歌い込んだ曲のほうがうまく聞こえます。
さらに、長く歌ってきた曲は自分の声の変化に合わせて歌い方が調整されています。伸ばすところを短くしたり、地声で通す範囲を変えたり。これは練習で作った技術に近く、新しい曲ではすぐに再現できません。十八番と呼ばれる曲があるのは、この積み重ねが形になったものです。確実に歌える曲が二、三曲あれば、初めての店でも困りません。
新しい曲を試すなら、場が温まって何巡かしたあとが扱いやすい。一人で歌うカラオケは曲を仕上げる場、カウンターは仕上がった曲を出す場と分けると選びやすくなります。選曲全般の考え方はスナックでよく歌われる曲の条件に整理しています。
西荻窪の地下で一曲
ジュゴンは西荻窪駅から徒歩1分、青い電飾看板の先の階段を下りた地下1階にあります。カウンター8席のみ、営業は21:00からLASTまで、水曜が定休。海をテーマにした内装で、白い石目のカウンターと青い波模様の壁が続きます。カラオケは1曲200円です。
8席という規模は、選曲の話でいえば、その日居合わせた人の顔が全員見える大きさです。誰がどの年代の曲を入れたかが分かるので、次に何を選ぶかの手がかりも掴みやすい。歌い方や順番の作法はスナックのカラオケをご覧ください。
自分の楽な高さを知って、歌い込んだ曲を一つ持っていく。50代の選曲に要るのは、たぶんそれだけです。
なお、当店は喫煙目的店のため、20歳未満の方はご入店いただけません。
よくあるご質問
50代がカラオケで高い曲を歌うには、キーをいくつ下げればいいですか?
決まった数値はありません。サビの最高音が無理なく出るところを基準に、半音一つずつ下げて探すのが確実です。下げすぎると低い音が響かなくなるため、一度に大きく動かさないほうが扱いやすくなります。
自分の世代の曲ばかり歌うと、若い人がいる場では浮きませんか?
昭和歌謡やフォーク、ドラマの主題歌のように、世代をまたいで知られている曲は少なくありません。先に歌った人の年代から極端に離れないものを選べば、流れを切らずに済みます。
歌に自信がない場合、新しい曲を練習してから行くべきですか?
順番を回す場では、練習中の曲より歌い込んだ曲のほうが楽です。息継ぎや力の抜き方が体に入っているぶん、同じ実力でもうまく聞こえます。新しい曲は場が何巡かしたあとが試しやすいタイミングです。
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監修: スナック ジュゴン公開

