
スナックで20代がカラオケの曲を選ぶとき、最初に引っかかるのは「自分の知っている曲が、この場で通じるのか」という一点だと思います。個室のカラオケなら誰も気にしない問題が、カウンターで全員が同じ画面を見ている店では急に輪郭を持つ。世代の構成がばらばらな場での選曲を、仕組みのところから整理します。
同じ画面を全員で見る、という前提
個室のカラオケは部屋を時間で借りて、来たメンバーだけで完結します。曲が誰かの趣味に寄っていても構わない。対してスナックのカラオケは店内に一台しかなく、居合わせた全員が聴き手になります。一曲入れるのは、数分間だけ場の主導権を借りることに近い。だから曲の良し悪しより「この場で流れたときにどうなるか」が軸になります。
これはカラオケが最初にどこへ置かれたかとも関係します。1970年代に登場した当初、カラオケ機器は家庭用ではなく業務用の設備として、スナックや小さな飲み屋に置かれるところから普及したと言われます。見知らぬ人が居合わせる店で歌うものとして始まった。1980年代以降に個室型が広がりましたが、スナックには初期の性格が残っています。
知らない曲を歌うのは悪いことなのか
悪いことではありません。むしろ「誰も知らない曲を歌ってはいけない」という思い込みのほうが、選曲を窮屈にしています。
聴く側にとって、知らない曲は二種類あります。入りどころもない曲と、知らないけれど聴いていられる曲です。差を作るのは知名度ではなく曲の構造のほうです。一般に、テンポが極端に速くない、繰り返しがある、歌詞が聞き取れる、長すぎない。こういう曲は初めて聴く人でも三十秒ほどで形がつかめます。
つまり線引きは「知られているか」より「聴いていられるか」。自分の世代の曲でも、この条件を満たすものは意外と多い。満たさない曲は同世代しかいない場に取っておけば済みます。そもそもスナックでは歌の上手さがほとんど問われません。歌に実績や立場がついてこないぶん、外しても場が和むだけです。作法の全体像はスナックのカラオケマナーにあります。
世代をまたいで共有されている曲を見つける
世代が違っても通じる曲は、実はかなりあります。探し方の見当をつけておくと、その場で困りません。
- カバーされた曲。ある年代のヒット曲が後の年代に歌い直されていると、上の世代は原曲を、下の世代はカバー版を知っている。同じ曲に入口が二つある状態です。
- 長く使われた曲。ドラマ、CM、スポーツ中継などで繰り返し流れた曲は、発表年に関係なく「聞いたことがある」層が厚い。
- 学校行事で流れた曲。自分の意思で聴いたわけではないのに、ほぼ全員の記憶に入っています。世代ごとに違う曲でも「あの時期にこれが流れていた」という話題になります。
- アニメや特撮の主題歌。放送期間が長い作品や、再放送が繰り返された作品の曲は年代の壁を越えます。
- デュエットの定番。二人分のパートに分かれている曲は、どちらか一方のパートだけを歌っても形になります。
曲の条件そのものはスナックでよく歌われる曲の条件で細かく書いています。
自分の世代の曲を歌うとき
共有されている曲だけを歌えばいい、という話ではありません。自分の世代の曲を入れたほうが場が動くことは多い。年代の離れた人にとって、若い世代のヒット曲は「名前は聞いたことがあるが、通して聴いたことはない」ものです。一曲流れれば新しい情報になり、あとから「さっきの曲は誰の歌だ」と聞かれる展開も起こる。知らない曲を歌ったことが、会話のきっかけになっているわけです。
歌う前に一言添えると、聴き手の構えが変わります。「これ最近の曲なんですけど」「学生のときによく聴いてました」。一文あるだけで、知らない曲が「あの人の曲」に変わる。順番としては、最初の一曲を共有されている側から入り、二曲目以降に自分の世代の曲を混ぜるのが無難です。
上の世代の曲を歌うと、なぜ場が動くのか
若い人が昭和歌謡やフォークを歌うと場が沸く、という現象は各地で語られます。聴き手が「自分の曲を知っていてくれた」と受け取るからで、音楽の趣味は相手が過ごした時間を肯定する形になりやすい。
ただ、無理に古い曲を覚える必要はありません。付け焼き刃は歌えば分かりますし、好きでもない曲を歌う夜は楽しくない。気になった曲を一曲ずつ増やせば足ります。世代が混ざる場についてはスナックで繋がる、世代を超えた友情にまとめています。
教わるという楽しみ方
選曲を「正解を当てる問題」と考えると苦しくなります。見方を変えれば、スナックのカラオケは曲を教わる場として効率がいい。検索やおすすめ表示で出てくる曲は、たいてい自分の好みの延長線上にあります。隣の人が入れた曲は、そこから完全に外れたところから来る。自分では辿り着けなかった曲に出会う経路です。
聞き方も難しくありません。「今の曲、なんて名前ですか」で足ります。そのまま調べて、次に来たときに歌えば一番いい返事になる。逆に上の世代の人から最近の曲を聞かれることもある。世代差は上下ではなく、持っている引き出しが違うだけです。
西荻窪の地下で一曲入れる
ジュゴンは西荻窪駅から徒歩1分、地下1階のカウンター8席の店です。カラオケは1曲200円。8席なので、誰が何を入れたかがその場の全員に見えます。知らない曲が流れたら聞いてみる、という距離感が成立する広さです。営業は21:00からLASTまで、水曜定休。当日の流れはスナックのカラオケにあります。
何を歌うか決まっていなくても構いません。誰かが入れた曲を聴いているうちに、歌いたいものが出てくることのほうが多い。
なお、当店は喫煙目的店のため、20歳未満の方はご入店いただけません。
よくあるご質問
自分の世代の曲を歌っても大丈夫ですか?
問題ありません。年代の離れた人にとっては新しい情報になり、曲名を聞かれるきっかけにもなります。歌う前に「最近の曲なんですけど」と一言添えると、聴き手の構えが変わります。
世代をまたいで知られている曲はどう探せばいいですか?
カバーされた曲、ドラマやCMで長く使われた曲、学校行事で流れた曲、放送期間の長いアニメや特撮の主題歌、デュエットの定番あたりが目安になります。
歌がうまくないと浮きますか?
一般に、スナックのカラオケでは上手さはあまり問われません。歌には仕事のような実績や立場がついてこないので、外しても場が和むだけのことが多いです。
歌わずに聴いているだけでもいいですか?
構いません。カラオケは強制ではなく、他の人の歌を聴いて過ごす人もいます。気になった曲があれば、歌い終わった人に曲名を聞いてみるのも楽しみ方のひとつです。
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監修: スナック ジュゴン公開

