
スナックから帰るときのマナーは、入るときほど語られません。入店の作法は「扉の開け方」「はじめてですと言う」といった形で紹介されるのに、席を立つ側の手順はあまり整理されていない。けれど実際に迷いやすいのは帰り際のほうです。会計はどう頼むのか、ボトルはどうするのか、まだ話が続いている場からどう抜けるのか。ここでは退店の場面だけを取り出して、順番に見ていきます。
会計は客のほうから声をかけて始まる
多くの飲食店では、店側が頃合いを見て伝票を持ってきたり、ラストオーダーを告げたりします。スナックでは、この合図が客側から出ることが多い。理由は業態のつくりにあります。一般に、スナックの会計は席にかかる料金と飲んだ分の組み合わせで、コースのように終わりの時刻が決まっているわけではありません。終わりを決めるのは客のほうなので、店は先回りして切り上げを促さないのが普通です。
言い方は「そろそろお会計お願いします」で足ります。手を小さく挙げる、目が合ったときに伝える。カウンターの店なら声は届きます。注意したいのは、コートを着てから言わないこと。会計は伝票をまとめる時間がかかるので、立ち上がる前に伝えておくと、その間に荷物をまとめる余裕ができます。
現金以外で払うつもりなら、このタイミングで一緒に伝えると早い。当店はクレジットカード・電子マネー・交通系ICに対応していますが、店によって扱いは違うので、外の店では座る前か会計を頼むときに確認しておくと安心です。支払いの考え方はお支払いにまとめています。
荷物とコートは会計を頼んだ直後にまとめる
カウンターの店は、通路が狭いことが多い。椅子の背にコートを掛けていたり、足元にカバンを置いていたりすると、立ち上がってから畳む動作が意外に場所を取ります。会計を頼んだ直後に荷物を手元へ寄せておくと、後ろを人が通るときに詰まりません。
グラスや灰皿を片付ける必要はありませんが、カウンターに私物を広げていたら戻しておく。借りたものは返します。
会計を待つ間に忘れ物を見ておくと、地下の店では特に助かります。当店は地下1階で、階段を上がってからでは戻るのに手間がかかる。傘立てを使ったなら傘、椅子の下のカバン。座っていた場所を一度見渡すだけで大半は防げます。
残ったボトルは預けるか、置いていくか
ボトルで飲んでいた場合、残りをどうするかを決めてから帰ります。選択肢は二つで、店に預ける(ボトルキープ)か、そのまま置いていくか。
預ける場合は「キープでお願いします」と伝えるだけです。多くの店では名前やニックネームを書いた札を付けて棚に保管します。次に来る予定が未定でも問題ありません。ただし期限は店ごとに違うので、預けるときに「どのくらい置いておけますか」と聞いておくと、次回にとまどわずに済みます。仕組みの全体像はボトルキープ入門とボトルキープで説明しています。
しばらく来られないと分かっているときは、置いていっても構いません。「これはもう大丈夫です」と伝えれば店側が片付けます。黙って帰ると、店は期限まで棚を空けて待つことになるので、伝えるほうが親切です。
帰り際の一言は短くていい
会計が済んだら、店を出る前に一言。「ごちそうさまでした」「楽しかったです」程度で十分です。長い挨拶は必要ありません。他の客がまだ話している最中なら、なおさら短いほうがいい。
近くに座っていた人がいたら、その人にも軽く会釈をします。カウンターは横並びなので、話していた相手に何も言わずに消えると、会話が途中で切れた形になる。「お先に失礼します」の一言があれば、残った側も区切りをつけられます。
歌の途中で席を立つのは避けたいところです。誰かがカラオケを歌っている最中は、拍手が終わるまで待ってから動くほうが場が乱れません。曲の残りが読めないときは、会計だけ先に済ませて、終わってから立つ。カラオケの使い方にも通じる考え方です。
扉と階段は、外に音を出さない場所
最後が扉です。スナックの多くは雑居ビルの中や地下にあり、扉の外はすぐ他のテナントや住宅です。当店も地下1階で、階段を上がるとすぐ路上になります。
扉は押さえて閉める。勢いよく閉まる構造の扉もあるので、手を添えて最後まで見届けると音が出ません。重い防音扉を使っている店では、開けた瞬間に中の音が外へ漏れます。開けっ放しにしないのは、暑さ寒さの問題ではなく音の問題です。
外に出てからの声量も同じ理由です。深夜の住宅街では、店の前での立ち話がそのまま近隣の負担になります。西荻窪のように駅から住宅地が近い街では特にそうで、解散の相談は駅前まで歩いてからにする。次の店に移る予定があるなら、行き先も店内で決めておくと路上で立ち止まらずに済みます(2軒目としてのスナック)。
退店の作法が向いている先
ここまでの五つは、どれも「自分が気持ちよく帰る」ための作法ではありません。会計の合図は店の動線を止めないため、荷物の整理は通路を塞がないため、ボトルの扱いは棚を無駄にしないため、帰り際の一言は残る人の会話を切らないため、扉の閉め方は近隣への音を防ぐため。向いている先はすべて自分の外側です。
スナックが長く同じ場所で営業できているのは、こうした配慮が客の側に積み重なってきたからでもあります。覚えるのは「帰ると決めたら、座ったまま先に伝える」の一点で、あとは順番が自然に決まります。来店全体の流れははじめての方へにあります。
なお、当店は喫煙目的店のため、20歳未満の方はご入店いただけません。
よくあるご質問
会計はどうやって頼めばいいですか?
「そろそろお会計お願いします」と声をかければ大丈夫です。コートを着る前、座ったままの状態で伝えておくと、伝票をまとめてもらう間に荷物を整理できます。
残ったボトルは持ち帰れますか?
一般に、開栓済みのボトルは店に預けるか置いていくかのどちらかです。預ける場合は「キープでお願いします」と伝えます。期限は店ごとに違うので、預けるときに確認しておくと安心です。
誰かがカラオケを歌っている途中でも帰れますか?
帰れますが、拍手が終わるまで待ってから動くほうが場が乱れません。時間が迫っているときは、会計だけ先に済ませておいて、曲が終わってから席を立つ方法があります。
帰るときに何か挨拶は必要ですか?
「ごちそうさまでした」程度の短い一言で十分です。近くの席で話していた人がいれば、軽く会釈しておくと会話の区切りがつきます。
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監修: スナック ジュゴン公開

