
チェイサーの頼み方を誰かに教わる機会は、ほとんどありません。水を頼むのは格好が悪い、酒が弱いと思われる。そんな気持ちで言い出せないまま、濃い酒だけを飲み続けてしまう人もいます。この言葉がどこから来たのか、なぜ水を挟むのか、何と言えば通じるのかを順に見ていきます。
チェイサーは「追いかけるもの」という意味
チェイサー(chaser)は英語の chase、追いかけるという動詞から来ています。強い酒を飲んだあとを追いかけるように飲むもの、という成り立ちです。語源どおりなら中身は水でなくてもよく、英語圏ではビールのあとにウイスキーのショットを飲む飲み方もチェイサーと呼ばれてきました。
日本では意味がだいぶ絞られて、ほぼ「酒と一緒に出される水」を指す言葉として定着しています。常温で出す店も氷入りの冷水を出す店もあり、これは店の考え方の違いで、どちらが正しいというものではありません。
似た言葉に「ハーフロック」「トワイスアップ」がありますが、こちらはグラスの中で酒と水を混ぜる飲み方です。チェイサーは混ぜずに別のグラスで飲む点が違い、酒そのものの濃度を変えたくないときはこちらが向いています。
水を挟むと、酒の味も体の負担も変わる
理由は大きく二つあります。ひとつは味覚の話です。強い酒を続けて飲むと、舌が刺激に慣れて香りや甘みを感じ取りにくくなります。間に水を通すと口の中がいったん平らに戻り、次の一口がまた立ち上がる。銘柄を飲み比べるときに水が添えられるのはこの効果を期待してのことです。
もうひとつは体の話です。一般に、アルコールには利尿作用があると言われ、飲んだ量より多くの水分が体から出ていくことがあります。つまり酒を飲むほど、体としては水分が減る方向に進む。ここで水を一緒に飲めばその差が埋まります。血中のアルコール濃度が急に上がるのを緩やかにする働きも指摘されており、飲酒に関する公的な啓発でも繰り返しすすめられている習慣です。
水は飲む量を減らす道具というより、同じ時間をより長く保つための道具だと考えたほうが実感に近いかもしれません。
日本酒には「和らぎ水」という呼び名がある
日本酒の世界では、同じ役割の水に別の名前がついています。和らぎ水(やわらぎみず)です。酒の強さを和らげる水という直球の名前で、酒蔵や酒販の現場から広まった言い方とされています。
背景には、日本酒がそのままの度数で飲まれる酒だという事情があります。水やお湯で割る焼酎やウイスキーと違い、日本酒は十五度前後をそのまま口に運ぶ。ビールの三倍前後の度数の液体を同じ感覚で飲み進めれば、ペースが速くなりすぎます。そこで別のグラスに水を用意し、数口ごとに挟む。日本酒と同量くらいの水が目安としてよく言われます。
呼び名が違うだけで、やっていることはチェイサーと同じです。ただ和らぎ水という言葉には、水を飲むことを後ろめたくさせない響きがあります。弱いから飲むのではなく、酒をちゃんと味わうために飲む。その位置づけが名前そのものに入っています。日本酒についてはビール・日本酒・梅酒のページにまとめました。
「水をください」で、ちゃんと通じる
結論から言えば、どんな言い方でも通じます。「チェイサーください」「水ください」「お水も一緒に」。このどれでも構いませんし、カタカナが気恥ずかしいなら日本語のほうがむしろ自然です。日本酒を飲んでいるなら「和らぎ水を」でもいい。
タイミングも自由で、最初の一杯と同時に頼んでおくのがいちばん楽です。
言い出しにくさの正体は、たいてい「弱いと思われる」という心配でしょう。ただ酒を出す側から見ると、水を頼む人は飲み慣れている人という印象になることのほうが多い。長く飲むつもりがある、味をちゃんと見ている。どれも歓迎される態度です。はじめての方へに書いた他の作法と同じく、構えるほどのことではありません。
水はソフトドリンクとは別の扱いになるのが一般的で、多くの店では無料で出されます。酒を飲まずに過ごしたい日の選び方はソフトドリンクのページにまとめています。
翌日に残るかどうかは、その夜の水で決まる部分がある
二日酔いの原因は完全には解明されていませんが、脱水とアセトアルデヒドの蓄積が関わるとする説が一般的です。このうち脱水は、飲んでいる最中の水でかなり左右されます。飲み終わってから慌てて水を飲むより、飲みながら挟むほうが効くと言われるのはこのためです。
もうひとつ、水を挟むと単純にペースが落ちます。グラスに手を伸ばす回数のうち何度かが水に置き換わるので、同じ時間を過ごしても酒の総量が減る。翌日への影響という点では、この効果のほうが大きいかもしれません。
帰る前の一杯を水にするのも、覚えておくといい習慣です。歌ったあとは特に喉が乾いているので、締めを水にしておくと外に出てからの感覚がだいぶ違います。歌う夜の過ごし方はカラオケの楽しみ方に書きました。
水のグラスが並んでいる景色
ジュゴンのカウンターは八席だけで、グラスを置く場所には余裕があります。酒のグラスの隣にもうひとつ水のグラスが並ぶ景色は、ここでは珍しいものではありません。地下一階の白い床と青い波模様の壁に囲まれた店内で、氷の入ったグラスが二つ並ぶのは、わりと海らしい絵でもあります。
チェイサーは、酒を控えるための我慢の道具ではありません。酒の味を最後まで保ち、同じ席にもう少し長くいるための、ごく普通の頼みものです。次に一杯目を注文するとき、ついでのように「水も」と付け加えてみてください。
なお、当店は喫煙目的店のため、20歳未満の方はご入店いただけません。
よくあるご質問
チェイサーはなんと言って頼めばいいですか?
「チェイサーください」でも「水ください」でも通じます。日本酒を飲んでいるなら「和らぎ水を」という言い方もあります。最初の一杯と同時に頼んでおくのがいちばん楽です。
チェイサーは有料ですか?
水はソフトドリンクとは別の扱いになるのが一般的で、多くの店では無料で出されます。考え方は店ごとに違うので、気になる場合は最初に確認してください。
和らぎ水とチェイサーは違うものですか?
役割は同じで、日本酒の席で使われる呼び名が和らぎ水です。酒の強さを和らげる水という意味で、日本酒と同量くらいを飲むのが目安としてよく言われます。
水を頼むと飲めない人だと思われませんか?
酒を出す側から見ると、水を頼む人は飲み慣れている人という印象になることのほうが多いです。味をちゃんと見ている、長く飲むつもりがあるという合図になります。
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監修: スナック ジュゴン公開

