
西荻窪駅の南口を出て一分ほど歩くと、青い電飾看板が目に入ります。階段を下りて地下一階、扉を開けるとカウンターが部屋の端まで見わたせる。スナック「ジュゴン」は、そういう店です。
内装は海をテーマにしています。白い石目のカウンター、青い波模様の壁、水色・白・薄紫の椅子。奥のガラスのボトル棚が青く光っていて、地下なのに暗さを感じません。席はカウンター八席だけ。その一室の中で、マイクが順番に回っていきます。
スナックのカラオケと個室カラオケは何が違うのか
一番大きな違いは、部屋を分けるか分けないかです。個室カラオケは自分たちのグループだけで一室を使い、時間で借ります。歌う人も聴く人も同じ仲間なので、何を歌っても身内の中で完結します。
スナックのカラオケは、一台の機械を店にいる全員で共有します。歌っている人の声は店内の全員に届きますし、逆に自分が歌っていない時間は、誰かの歌を聴いている時間になります。順番が回ってくるまでは、グラスを持ったまま人の歌を聴く。これが個室にはない部分です。
機材の置かれ方も違います。個室カラオケはモニターが正面にあり、歌う人は画面のほうを向きます。スナックでは一般に、歌う人はカウンターに座ったまま、あるいは少し立って歌います。姿勢がステージ的にならないぶん、気負わずに歌える人も多いようです。
選曲の作法も変わります。個室なら何を何曲続けても構いませんが、店全体で一台を使う以上、一般には一人が連続で入れすぎない、長すぎる曲は場の流れを見て選ぶ、といった感覚が働きます。このあたりはスナックのカラオケマナーにまとめています。
なぜスナックにはカラオケがあるのか
カラオケはもともと、家庭用ではなく飲食店の設備として広まったものです。一九七〇年代、八トラックのテープを使う業務用の機械が酒場に置かれるようになり、客が伴奏に合わせて歌うという遊び方が定着しました。個室専門のカラオケボックスが各地に増えるのは一九八〇年代の後半以降で、順番としては「店で歌う」ほうが先にあります。
その後、電話回線で曲データを配信する通信カラオケが普及し、収録曲数が一気に増えました。それまでは店が持っているテープやレーザーディスクの分しか歌えませんでしたが、通信になってから新曲が短い間隔で追加されるようになります。今のスナックで昭和の歌謡曲も最近の曲も同じ機械で歌えるのは、この流れのおかげです。
つまりスナックのカラオケは、あとから足された余興というより、業態と一緒に育ってきた設備だと言えます。
曲の幅と、選曲の考え方
ジュゴンでも、最新曲から古い歌まで幅広く歌えます。リクエストにも対応しています。
とはいえ「何を歌えばいいか」で迷う人は少なくありません。一般に、スナックで選曲を考えるときの手がかりは三つあります。
ひとつは年代です。その場にいる人の年齢層が広いときは、長く歌い継がれている曲のほうが場に届きやすい。逆に近い世代がそろっているなら、その世代の曲で盛り上がることもあります。
ふたつめは時間帯です。開店直後のまだ人が少ない時間は、静かな曲やゆっくりした曲が合います。人が増えて声が重なる時間になると、テンポのある曲のほうがはまりやすくなります。
みっつめは、自分が気持ちよく歌える曲かどうかです。うまい曲より、歌い慣れた曲。無理なキーで挑戦するより、最後まで気分よく歌える曲を選んだほうが、聴いているほうも楽です。
カウンター越しに歌うということ
ジュゴンでは、カウンター越しに歌います。座ったまま、あるいは少し身体を起こして、目の前に人がいる距離で歌う。個室のステージ感とは別種の、話の延長のような歌い方になります。
八席という広さなので、音量も過剰になりません。伴奏の音、氷の音、グラスの置かれる音が同じ部屋の中にあって、その中に歌が混ざります。歌い終わったあとにそのまま会話に戻れるのも、この距離だからです。
歌わずに、伴奏だけ流して聴いている人もいます。歌うことが目的化していないぶん、マイクを取らない時間も居心地が悪くなりません。店内の過ごし方はカラオケの楽しみ方にも書いています。
一人で行っても歌えるのか
歌えます。むしろ一人で来て歌う人は珍しくありません。
一人でカラオケボックスに入る「ひとりカラオケ」は、誰にも聴かれないことが価値になります。スナックのカラオケはその逆で、聴いている人がいることが前提です。どちらが良いという話ではなく、目的が違います。練習したいならボックス、誰かの前で歌いたいならスナック、という使い分けになります。
一人で入った場合、順番の回り方は自然と早くなったり遅くなったりします。客が少なければ続けて歌えますし、混んでくれば間が空きます。そのあいだは人の歌を聴いていればいい。一人で来たときの過ごし方はひとりで訪れる方へにまとめています。
歌わない人はどう過ごすか
カラオケのある店に入ると「歌わされるのでは」と身構える人がいますが、歌うかどうかは本人が決めることです。一般に、スナックでカラオケが強制されることはありません。
聴く側に回ったときのほうが、この業態の面白さが分かることもあります。まったく知らない人が自分の知らない曲を歌っていて、それを黙って聴いている。その時間が、個室カラオケにはない部分です。拍手を送る、送らない、それも自由です。
初めて入る人が気になる点は初めての方へにまとめてあります。
歌うときに知っておくと楽な三つのこと
順番は機械の中で決まる。 多くのスナックでは、入力した順に曲が流れます。自分が入れた曲がいつ流れるかは端末の予約リストで分かるので、それを見ていれば身構える必要はありません。
曲番号は機種で違う。 同じ曲でも、カラオケの機種が変わると番号が変わります。手帳に番号を控えている人もいますが、曲名や歌手名で検索したほうが確実です。
入れた曲は取り消せる。 間違えて入力したときは削除できます。気づいた時点で言えば済む話なので、入力ミスを気にしすぎる必要はありません。
西荻窪という街とカラオケの時間
西荻窪は中央線沿線の中でも、大きな繁華街というより個人の店が並ぶ街です。骨董屋や古本屋が昼の顔で、夜になると小さな飲食店に灯りが入ります。人の流れがゆるやかなぶん、夜の時間も急かされません。
ジュゴンは二一時から。地下に下りてしまうと外の時間は見えなくなるので、一曲歌って、一杯飲んで、また誰かの歌を聴いているうちに時間が過ぎます。終電を気にする人も多い街ですが、駅から徒歩一分なので、直前まで店にいられるのは地の利です。行き方はアクセスを見てください。
店の場所と、カラオケの料金
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住所:東京都杉並区西荻南3-15-13 高梨ビル B1F
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電話番号:03-5344-9888
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営業時間:21:00〜LAST
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定休日:毎週水曜日
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カラオケ料金:1曲200円(チャージなどは料金システムを参照)
カラオケは一台をその場の全員で使う設備です。だから、誰が歌うかによってその日の店の空気が変わります。同じ曲でも、歌う人が違えば別の夜になる。西荻窪の地下で、そういう一曲を入れてみてください。
なお、当店は喫煙目的店のため、20歳未満の方はご入店いただけません。
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監修: スナック ジュゴン公開 / 更新

