
お酒に弱いのは、意志や慣れの問題ではなく体質の話です。だから弱い人の飲み方は「鍛える」方向ではなく、自分の代謝速度に合わせて一杯のペースを組み立てる方向で考えたほうが現実的です。ここでは体の仕組みから始めて、薄めに作ってもらう、時間をかける、水を挟むという具体的な方法まで順に見ていきます。
顔が赤くなるのは酵素の型で決まっている
アルコールは体内でまずアセトアルデヒドに変わり、さらに酢酸へ分解されていきます。この二段目を担うのがALDH2という酵素で、日本人を含む東アジアの人には、その働きが弱い型や働かない型を持つ人が相当数います。顔が赤くなる、動悸がする、頭が痛くなるといった反応は、分解しきれないアセトアルデヒドが体に残っているサインです。
つまり「弱い」は、その日の気合いでも場数でもなく、生まれ持った酵素の型の話です。若いころは飲めたのに年々弱くなったという感覚も、肝臓の処理能力や体内の水分量が加齢で変わることと関係すると考えられています。
ここを押さえておくと、席で無理をする理由がなくなります。飲めない体質の人に飲ませることは反応を強く出す行為で、健康被害につながると指摘されてきました。近年はアルコールハラスメントという言葉も定着しています。断ることは場を壊す行為ではなく、体の事情を伝えているだけです。
自分の量を数字にしておく
体質は変えられませんが、自分の目安を数字で持つことはできます。指標として使われるのが純アルコール量で、飲んだ量(ml)×度数(%)÷100×0.8 で計算できます。ビール中瓶1本(500ml・5%)なら20g、日本酒1合(180ml・15%)なら約22g、ウイスキーのシングル(30ml・43%)なら約10gです。
数字で覚えておく利点は、種類の違う酒を飲んでも換算できることです。「ビールなら1杯、水割りなら薄めで2杯まで」というように自分の単位に置き換えておけば、店が変わっても判断がぶれません。焼酎やウイスキーを割って飲む場が中心なら、焼酎のページにあるような度数を見ながら、割り方で下げていく考え方が使えます。
薄く作ってもらうのは普通の注文
割って飲む酒の良いところは、濃さを自分で決められることです。水割りやソーダ割りは、指定がなければ標準的な濃さで作られますが、「薄めで」と添えればそのとおりに出てきます。特別なわがままではなく、日常的な注文のひとつです。
一般に水割りの比率は酒1に対して水2から3程度が標準とされます。これを4や5にすれば、同じ一杯でも体に入る量は半分近くになります。氷を多めにしてもらうのも近い効果があり、時間が経つにつれてさらに薄まります。炭酸で割ると口当たりが軽くなるぶん飲む速度が上がりやすいので、弱い人は水割りのほうが管理しやすいこともあります。
言い方は短くて構いません。「焼酎の水割り、かなり薄めで」「ウイスキーを少なめに」。伝えなければ標準で作られるだけですし、二杯目で「さっきより薄く」と足していくのも自然な流れです。
一杯を長く持たせる
弱い人にとって効いてくるのは、一杯の量より、単位時間に入るアルコールの量です。体が分解する速度はおおよそ決まっていて、飲む速度がそれを超えると血中濃度が上がり、酔いが深くなります。同じ二杯でも、一時間で飲むのと三時間かけて飲むのとでは結果が変わります。
長く座る前提の店では、これが有利に働きます。歌っている間や話を聞いている間はグラスに手が伸びません。ロックを選ぶのも方法のひとつで、氷が溶けるにつれて後半は自然に薄くなります。
順番を変える手もあります。乾杯直後の一杯目は誰でも速く飲みがちなので、最初だけソフトドリンクにして二杯目からお酒にする。飲まない選択肢はソフトドリンクに整理してあります。
水を挟むと何が変わるのか
酒の合間に水を飲む習慣は、欧米ではチェイサー、日本の酒席では和らぎ水と呼ばれてきました。日本酒の造り手の間で古くから言われてきた飲み方で、近年は酒造組合などもすすめています。効果は二つあります。
一つは脱水を防ぐことです。アルコールには利尿作用があり、飲んだ量以上の水分が出ていきます。翌日の頭痛やだるさの一部は、この脱水によるものと考えられています。もう一つは単純にペース配分で、グラスが二つあれば、飲みたくなったときに水のほうを取れます。手持ち無沙汰でつい酒に手が伸びる状況を、物理的に減らせます。
目安は酒と同量程度。一杯ごとに一杯の水と覚えておけば十分です。頼めばお冷やを出す店は多く、ソフトドリンクを一つ挟むのでも同じ役割になります。
飲まない前提で席を選ぶ
ここまで飲み方の技術を並べましたが、飲まないという選択がいつでも取れる場であることが一番効きます。乾杯だけ付き合って、あとは水とソフトドリンクで過ごす。それで問題のない店なら、ペース配分に神経を使うこと自体が減ります。
チャージが席に対してかかる仕組みの店では、注文の杯数で居心地が変わりません。会計の考え方は料金の明朗さに書いたとおりで、飲む量と過ごしやすさは切り離されています。西荻窪のジュゴンはカウンター8席だけの店で、飲めない方にお酒をすすめることはしません。最初に「弱いので薄めで」「車なので飲みません」と伝えていただければ、そのとおりにお出しします。
弱い体質は治すものではなく、付き合い方を決めるものです。自分の量を知り、薄く作ってもらい、時間をかけ、水を挟む。この四つを持っておけば、飲めないことが夜の場に出ていかない理由にはならなくなります。
なお、当店は喫煙目的店のため、20歳未満の方はご入店いただけません。
よくあるご質問
お酒が弱くても入店できますか
できます。ソフトドリンクだけで過ごす方もいますし、飲めない方にお酒をすすめることはありません。最初に伝えていただければ、そのとおりにお出しします。
薄く作ってほしいと頼んでもいいですか
問題ありません。「水割りを薄めで」「氷を多めに」と伝えるだけで濃さは変わります。伝えなければ標準の濃さで作られるだけなので、遠慮せず言ってください。
お酒に弱い体質は飲んで鍛えられますか
アルコールの分解にはALDH2という酵素が関わり、その働きの強さは生まれつきの型で決まります。慣れで反応が軽く感じることはあっても、体質そのものが変わるわけではありません。
水はどのくらい飲めばいいですか
一般的な目安は酒と同量程度です。一杯ごとに一杯の水と覚えておけば十分で、ソフトドリンクを一つ挟むのでも同じ役割になります。
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監修: スナック ジュゴン公開

